公開講座:地域とデザイン その地域固有の価値は、いかにかたちづくられるか?

今日の複製可能なビジネスモデルやグローバルな原材料の供給網は、事業の規模拡大を加速させるいっぽうで、それぞれの地域に根付く固有の文化を消し去り、世界を均質化する働きがあります。そして不思議なことに、そのデザインされた均質な街に、幸福度の高い生活があるわけでもなさそうです。

これは普遍的な解を目指した近代デザインが引き起こす根本的な〈矛盾〉となり、私たちの前に立ちはだかっています。近年の小ロットのクラフト飲料ブームも、規模拡大よりも生のリアリティを伴った活動を志向するデザイナーが増えているのも、均質化する世界への対抗のようでもあります。これからのデザインには、それぞれの地域の価値を経済合理性のものさしだけでは測れない多元的なものとして見直せるかどうかが問われています。

それでは、その地域に眠る独自の価値とは、いかにして発掘できるのでしょうか。そもそも、価値として交換される以前に、その地域の人々の中で文化はどのようにかたちづくられるのでしょうか。それらが形成される原点にまで立ち返りつつ探索してみることは、地域性を持ったデザインを考える上で大きな意味があるはずです。

こうした歴史に埋め込まれた〈問い〉を考えるために、今回の公開講座では、山形県新庄市を拠点にデザインに取り組まれている吉野敏充さんをお招きしました。吉野敏充デザイン事務所は、独特の文化を感じさせる地域商品や冊子の編集で多くの実績があります。Xデザイン学校講師の上平による上平研究室の鹿児島県阿久根市でのデザインリサーチの実践事例と合わせて、北の生活文化と南の生活文化の中で形成された地域の価値と、それをどのようにデザインに活かせるのかについて考えてみたいと思います。

今回のトークは、地域におけるデザインの実践方法やそれらを読み解くことに関心のある人々に大きな示唆を与えてくれるでしょう。忙しい年始の夜になりますが、このテーマにご関心をお持ちのみなさま、ぜひふるってご参加ください。

■ ⽇時:1月11日(木)19:00-21:30(開場 18:50)オンライン
■ 主催:X デザイン学校、X デザイン研究所
■ 協力:⽇本デザイン学会 PD 部会
■ 参加費:2000円 (Xデザイン学校 2023年度受講⽣は無料)
◾️詳細・申し込み:https://peatix.com/event/3782466/

■プログラム
19:00-19:10 「地域とデザイン」山崎和彦(Xデザイン学校)

19:10-19:50 「地域への感謝から生まれる自然体のクリエイティブ」
      吉野敏充(吉野敏充デザイン事務所)

19:50-20:30 「阿久根市の観光拠点のためのデザインリサーチ」
      上平崇仁(専修大学)

20:30-21:10 考えるディスカッション「地域とデザイン」
      吉野敏充(吉野敏充デザイン事務所)
      上平崇仁(専修大学)
      浅野智(Xデザイン学校)
      山崎和彦(Xデザイン学校)

21:10-21:30 Xデザイン学校2024年コースについて

■プロフィール:吉野敏充(吉野敏充デザイン事務所 代表)
1979年生まれ、山形県新庄市鳥越出身。東京デザイン専門学校卒業。ソフト・オン・デマンド入社後SODアートワークスとして独立。 2010年に代表取締役を辞任。山形県に帰郷し、吉野敏充デザイン事務所を設立。 地元である新庄最上・山形県の地域資源を活用したプロジェクトとして、地元産農作物などの販売を行うマーケット『kitokitoMarche』、山形県新庄・最上地域広域情報誌『季刊にゃー』の制作・発行、山形県の工芸品のリデザイン・販路支援プロジェクト『山から福がおりてくる』の運営、新庄の後世に残す食のプロジェクト『新庄いいにゃ風土/SHINJO ii-nya FOOD』のプロデュースなど。宮沢賢治の弟子松田甚次郎が開設した最上共働村塾に参加していた吉野善太郎、吉野新平を祖先に持つ。

■プロフィール:上平崇仁(専修大学 教授)
デザイン研究者、専修大学教授。1972年鹿児島県阿久根市生まれ。1997年筑波大学大学院芸術研究科デザイン専攻修了。グラフィックデザイナー、東京工芸大学芸術学部助手、コペンハーゲンIT大学インタラクションデザイン・リサーチグループ客員研究員等を経て、現在、専修大学ネットワーク情報学部教授。2000年の草創期から情報デザインの研究や実務に取り組み、情報教育界における先導者として活動する。近年は社会性や当事者性への視点を強め、デザイナーだけでは手に負えない複雑/厄介な問題に取り組むためのコ・デザインの仕組みづくりや、人類学の視点を取り入れた自律的なデザイン理論について研究している。日本デザイン学会情報デザイン研究部会幹事。大阪大学エスノグラフィラボ招聘研究員。㈱ACTANTデザインパートナー。著書に「情報デザインの教室」(丸善出版/共著)、「コ・デザイン―デザインすることをみんなの手に」(NTT出版/単著)など。

第71回 春季研究発表大会のご案内|第1報

2024年度の第71回春季研究発表大会は、以下の通り開催予定です。
詳細につきましては、決まり次第、順次ご案内いたします。

日時・会場

  • 2024年 6月21日(金)・22日(土)・23日(日)
  • 九州産業大学(福岡市東区香椎 2-3-1)

大会テーマ|情報環境のデザイン

インターネットの普及、AIの本格稼働など、目まぐるしく変化する情報環境において、情報の氾濫、漏洩、誹謗中傷、フェイク等、「情報災害」とも言える様々な問題が発生しています。制御不能な情報が氾濫する社会で、デザイナーにできることは何か。情報インフラ(ハード)とコンテンツ(ソフト)の両面から議論を深めたいと思います。

発表費・参加費

  • 発表費:6,000円
  • 参加費
    • 会  員:6,000円、非会員 7,000円(当日受付の場合は + 1,000円)
    • 学生会員:3,000円、学生非会員 3,500円(当日受付の場合は + 1,000円)
    • 懇親会費:5,000(学生会員 2,500)
    • エクスカーション:3,000(予定)

今後の予定

  • 2月:春季大会専用サイトの公開
  • 3月:演題登録(発表申し込み)・発表概要の投稿
  • 4月:発表概要のチェック
  • 5月:参加登録(発表費・参加費の電子決済を含む)
  • 6月上旬:発表プログラムの公開

宿泊等について

大学へのアクセスが良い宿泊場所は「博多駅周辺」となります。
12月20日現在で確認したところ、福岡市内で医療系の大きな学会等はありませんが、
アジアからの旅行客等は増加傾向にありますので、早めのご予約をお勧めいたします。

開催校実行委員会

井上 貢一(九州産業大学 芸術学部 ソーシャルデザイン学科)| 実行委員長
井上 友子(九州産業大学 芸術学部 ソーシャルデザイン学科)
岩田 敦之(九州産業大学 芸術学部 ソーシャルデザイン学科)
黒岩 俊哉(九州産業大学 芸術学部 芸術表現学科)
永嶋 さゆり(九州産業大学 芸術学部 ソーシャルデザイン学科)
羽太 広海(九州産業大学 芸術学部 芸術表現学科)
真島 猛(九州産業大学 芸術学部 ビジュアルデザイン学科)

お問合せ

inoue.ko※ip.kyusan-u.ac.jp( ※ → @ )

日本デザイン学会第70回研究発表大会概要集公開のお知らせ

日本デザイン学会第70回研究発表大会概要集がJ-STAGE上で公開されました.

詳細は下記URLをご覧下さい.

日本デザイン学会研究発表大会概要集
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jssd/-char/ja

募集:特許庁非常勤職員「意匠審査資料調査員」(応募締切:令和5年12月11日)

特許庁では、意匠審査の補助業務のうち意匠出願についての下調査または意匠出願への意匠分類付与等の業務に従事する非常勤職員「意匠審査資料調査員」を募集しております。

募集人数:若干名

任用予定期間:令和6年4月1日~令和7年3月31日

(任用終了後の採用を希望する場合は、原則として改めて採用試験を受験する必要があります。)

応募締切:令和5年12月11日(月)必着(郵送の場合は同日必着。E-mailの場合は同日15時まで。)

勤務条件、求める人材(応募資格)、応募方法、選考方法など、詳細は以下の特許庁ウェブサイトをご参照ください。

https://www.jpo.go.jp/news/saiyo/other/hijokin/chousain/20231106_isho-shinsa-shiryo.html

公開講座:(エツィオ・マンズィーニ著 出版記念)ここちよい近さがまちを変える/ケアとデジタルによる近接のデザイン

■ 要旨:ソーシャルイノベーションとサスティナビリティに関するリーダーであるエツィオ・マンズィーニ(ミラノ工科大名誉教授)は、「問題の見方そのものを変えていくのが第一ステップになり、そこで意味を問うことで新しい文化がつくられる。問題解決と意味の両方をカバーしないといけない。それらすべてを支えるのがデザイン文化」と語っています。彼はサービスデザインのいわば開拓者の一人ですが、2009年にDESISと呼ばれる世界各国のデザイン系大学とのネットワークをつくり、ソーシャルイノベーションに対するデザインの活用を広めてきた人です。

このマンズィーニの著「Livable proximity — ideas for the city that cares」の日本語版が出版されます。この本は、マンズィーニのソーシャルイノベーションへの考え方と「ここちよい近さ(近接)」という視点を日本で活用してもらうことを目的としています。この本では、「パンデミックによって、私たちの生活に大きな変化がありました。オンラインサービスの充実やリモートワークの普及によって、自分の家にとじこもる生活スタイルも一般的になったのも、その一つです。さて、これからの私たちの生活を考えてみると、「ふれあうこと」や「近くにいること」が大事なことに気づきます。そのようなアプローチの基本となるのが「ここちよい近さ(近接)」です。この視点は、まち、地域、都市、ケア、コミュニティ、デジタル、経済、デザインへの見方を変えてゆくでしょう。」という文章からスタートしています。

本イベントでは、この本の出版記念として、翻訳・解説者の6名がそろいます。安西洋之(モバイルクルーズ)、本條晴一郎(静岡大学)、森一貴(参加型デザイナー)、澤谷由里子(名古屋商科大学)、山﨑和彦(Xデザイン研究所)、山縣正幸(近畿大学)がこの本の各章について話題提供して、最後に参加者とともに「日本における近接のデザイン」のディスカッションします。ご関心をおもちのみなさま、ぜひご参加ください。


■タイトル:Xデザイン学校公開講座:(エツィオ・マンズィーニ著出版記念)
ここちよい近さがまちを変える、ケアとデジタルによる近接のデザイン
■ ⽇時:11月22日(水)19:00-21:00
(リアル会場は18:30開場、オンラインは18:50開場)
■ リアル参加:インフォバーン東京オフィス(本社)定員40名(先着順)
所在地:東京都渋谷区円山町23-2 アレトゥーサ渋谷(受付6F)
最寄駅:京王井の頭線「神泉駅」 徒歩1分、渋谷駅徒歩10分ぐらい
Web: https://www.infobahn.co.jp/company
■ オンライン参加:zoomによる参加
■ 主催:X デザイン学校、(株)X デザイン研究所
■ 協力:⽇本デザイン学会 PD 部会
■ 参加費:2000円
■ 詳細・申込:https://peatix.com/event/3727942/

■ プログラム
18:30-19:00 交流タイム(リアル会場)
19:00-20:30 翻訳者・解説者からの言葉
・「はじめに」安西洋之(モバイルクルーズ)オンライン参加
・「近接とは何か?」本條晴一郎(静岡大学)
・「近接の都市」森一貴(参加型デザイナー)
・「ケアする都市」澤谷由里子(名古屋商科大学)
・「近接のデザイン」山﨑和彦(Xデザイン研究所)
・「近接の都市とデジタルプラットフォーム」山縣正幸(近畿大学)オンライン参加
20:30-21:00 考えるディスカッション「日本における近接のデザイン」

■エツィオ・マンズィーニについて
エツィオ・マンズィーニはイタリアのデザイン研究者であり、ソーシャル イノベーションとサスティナビリティのためのデザインに関するリーダーです。現在は、ミラノ工科大学の名誉教授、イノベーションとサスティナビリティのためのデザインに関する国際ネットワークであるDESISの創設者です。これまでに、エリサバ デザイン スクール アンド エンジニアリング(バルセロナ)、同済大学(上海)、江南大学(無錫)、RCA(ロンドン)の客員教授です。代表的な著書は、「日々の政治 ソーシャルイノベーションをもたらすデザイン文化」、「Design, When Everyone Designs」と最新著書として「Livable Proximity: Ideas for the City That Cares」などがあります。

■「ここちよい近さがまちを変える  ケアとデジタルによる近接のデザイン」について
ソーシャルイノベーションの第一人者、エツィオ・マンズィーニ著「Livable proximity — ideas for the city that cares」は、これからのソーシャルイノベーションに重要な示唆を与えてくれる本です。Xデザイン出版では、この本の日本語版を刊行するために、「ソーシャルイノベーション研究会」での議論をヒントにしながら、日本語版の解説や日本での事例なども付け加えました。この日本語版は監修を安西洋之さんと山崎和彦さんが行い、翻訳メンバーは2人に加えて本條晴一郎さん、澤谷由里子さん、山縣正幸さん、森一貴さんの合計6名です。また、この本をより理解するために、翻訳メンバーはイタリアに訪問して、エツィオ・マンズィーニやイヴァナ・パイスと現地で打ち合わせをしたり、この本で事例として紹介されている地域を訪問したり、認知症のケアセンターを訪れています。さらに、日本での事例となる場所への訪問もしています。詳細:https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784910984025

人材募集:教員公募:関東学院大学 人間共生学部 共生デザイン学科

このたび関東学院大学 人間共生学部 共生デザイン学科では 下記の教員を募集します。
【募集】教授、准教授、講師(専門分野等:デザイン学(情報デザイン分野))1名

【着任時期】 2024年4月1日
【応募締切】 2023年11月30日(木)必着

※詳しくは下記ウェブサイトをご確認ください。
https://kyousei.kanto-gakuin.ac.jp/news/20231025-5744/

2023年度秋季大会「学生プロポジション」優秀賞のお知らせ

下記16件が優秀賞に選ばれたことをお知らせいたします(会場順発表順)。

市川市消防局との連携活動について
メタバースを活用した祭りの魅力を伝えるデザイン研究
ロトスコープ技法を応用した動的タイポグラフィ手法の提案
動物園のふれあいコーナーのリニューアル提案
全層循環をテーマにした子供向けカードゲーム
Webカメラを用いたVR用簡易モーションキャプチャシステムの開発
空想地図を通した地図デザインの研究
教育機関における新しい情報発信方法の提案
3DCGを使用した違和感のない2Dアニメーション技法の適用と評価
防災を取り入れた地域ブランディングの研究
ゲーム体験を介したアイデンティティ形成が自己認識に与える影響
ナラティブに着目した能動的体験デザインのための違和感に関する研究
おたまじゃくしを用いた音楽生成装置
曲木椅子
図形に抱く印象と見られやすさの相関性評価
特定構図の写真を用いた映像表現の実験

2023年度 日本デザイン学会第5支部発表会・ライトニングトーク・ベストトーク賞のご報告

2023年10月21(土)オンラインで開催された2023年度 日本デザイン学会第5支部発表会「ライトニングトーク」において、参加者の投票結果をもとに実行委員会で審議の結果、以下2件にベストトーク賞を授賞することに決定いたしましたので、ここにご報告いたします。

  • 豊田観千尋 / 近畿大学
    バーチャル八十八ヶ所巡礼in篠
  • 黒崎美羽 / 大分県立芸術文化短期大学
    親しみやすい盆栽のグラフィック作

発表概要は、以下からご覧いただけます。
https://design.kyusan-u.ac.jp/jssd5th2023/

名誉会員 原田昭先生 叙勲のお知らせ

当学会の名誉会員、原田昭先生が、令和5年秋の叙勲で「瑞宝中綬章」を受章されました。
原田先生が栄誉に輝かれましたことを心よりお慶び申し上げます。