第59回春季研究発表大会 テーマセッションについて
各テーマセッションで募集している研究内容の説明です。
1)家具・木工研究部会:SIG Furniture and Woodwork Research
◯伝統的資源の現在学:The present study of traditional resources
家具、木工に関するデザイン研究をコアとして、木質材料やインテリアデザイン全般の基礎から応用までの研究を対象としています。人間の慣習的な暮らしを支えてきた自然素材を用いた手仕事から、それを継承した現在・未来の暮らし方を作り出す先端的技術を用 いた素材やシステムまで幅広い視点からのセッションです。
2)デザイン理論・方法論研究部会:SIG Design Theory & Methodology
①デザイン科学の枠組みとタイムアクシス・デザイン:Framework of Design Science and Time-axis Design
デザイン行為における法則性の解明およびデザイン行為に用いられる知識の体系化を目指す学問;「デザイン科学」の枠組み構築とその応用を対象として幅広く議論を行う.また,応用事例として,従来のデザインに時間軸の概念を導入した新たなパラダイム;「タイムアクシス・デザイン」を取り上げる.主なキーワードとしては,デザイン科学,デザイン理論,デザイン方法論,デザイン方法,デザイン実務,デザイン哲学,タイムアクシス・デザイン,価値成長デザイン,デザインの生命化・奉仕化などが挙げられる.
②形態論と創発デザイン:Morphology and Emergent Design
形の分析・発想・評価など,形にかかわる様々なテーマを対象にするとともに,部分と全体の双方向的な関係性から形や動きが生まれる「創発」の現象とそのデザインへの応用も取り上げ,幅広く議論を行う.主なキーワードとしては,形態論,造形論,創発デザイン,最適デザインなどが挙げられる.
③感性デザインと情緒デザイン:Kansei Design and Emotional Design
ヒトの価値観の多様性をはじめとして,感性にかかわる様々なテーマを対象にするとともに,その上位に位置する「情緒」に関する事象やそのデザインへの応用も取り上げ,幅広く議論を行う.主なキーワードとしては,感性デザイン,感性科学,デザインと場,情緒デザイン,感動などが挙げられる.
④ロバストデザイン,ユニバーサルデザイン,ユーザビリティ:Robust Design, Universal Design, Usability
人工物の使用環境をはじめとする場の多様性に対し,機能のロバスト性を確保する「ロバストデザイン」を対象にするとともに,それに関連するユニバーサルデザインやユーザビリティも取り上げ,幅広く議論を行う.主なキーワードとしては,ロバストデザイン,多様場,ユニバーサルデザイン,エルゴデザイン,人間工学,福祉,サステナブルデザイン,ユーザビリティ,UI,HCDなどが挙げられる.
3)情報デザイン研究部会:SIG Information Design
①地域社会と情報デザイン:Information Design for Local Communities
地域コミュニティに特有の状況や課題を理解し、その向上に向けたデザインを探求する活動についての研究・実践。使う現場にデザイナーが入って、使う人と一緒にデザインする活動(リサーチに基づくデザインや参加型デザイン)に関する報告など。具体的なデザイン対象については領域を特定せず、例えば情報技術を応用したもの、そうでないものの両方を対象とする。
②デザインとワークショップ:Design and Workshop
何かをデザインするためのワークショップや、デザインと社会との関係を理解するためのワークショップなど、ワークショップという活動を使ったデザイン研究・実践。また、ワークショップそのものの計画・実践・分析に関連する報告も対象とする。
4)サービスイノベーションデザイン研究部会:SIG Service Innovation Design
◯サービスイノベーションデザイン:Service Innovation Design
新たな価値を生み出すサービスを考えようとすると,これまでの延長線上の発想ではなかなかブレイクスルーできないことがままあります。こういうとき,もう一度サービスの原点に立ち返って考え直すこと,そしてサービスそのものの体系的・科学的観点から見つめ直すことが,重要ではないでしょうか。
このセッションでは,サービスを議論する場合,往々にして事例を中心にしたものが主流であったのに対して,あえてその理論的な背景やサービスを工学的にとらえるためのアプローチ方法などについて考えることで,ブレイクスルーするための足がかりとしたいと考えています。
5)創造性研究部会:SIG Design Theory and Creativity
◯社会に関わる創造性―メタデザイン―:Creativity linked Society―Meta-Design―
デザインは人間にしかできない創造的活動といわれています.では,人間らしさとは何でしょうか?
社会との関わりはデザインの方とプロセスを決定付けると考えられます.デザインのプロセスをより創造的にするのは何か?今日,個人や組織,地域の中でデザインのさまざまな試みが行われています.また,デザインは社会のなかでこそ生きるといえます.デザインがもたらす新しい意味や感覚は,社会の新しい動きを生み出すかもしれません.
このテーマセッションでは,デザインが社会において人間らしく,また,より創造的であるためには何が大事か,その考え方や方法を議論したいとおもいます.そのためにも,情報デザイン,プロダクトデザイン,環境デザイン,クラフト,芸術といった分野や専門領域をこえ,多視点の議論がメタレベルで交わることを期待します.日ごろ取り組んでいる研究の成果や試みを発表し,意見を聞きあい,交流する機会として参加してください.
6)バイオメディカルデザイン研究部会:SIG Biomedical Design
◯医療・医用機器とデザイン:A Medical Treatment and a Medical Device, and a Design
医療領域のデザインは、それが医療機器デザインや人工関節などの人体再建の構造デザインであるとを問わず、医学との積極的な協力と工学的な手法を取り入れ、その現象的解明を進展させると同時に、より有効な手段と有意義なデザイン手法の提供に努力が向けられる必要がある。
医学にデザインの手法をいかに取り入れるかという問題は、それが医学とデザインとの境界領域のため、両者の緊密な連繋が必要なのは勿論であるが、デザイン側においても、医学と工学の協力を得なければ充分な成果を挙げることはできない。また生体工学的概念を具体的に進展させるためにデザインの手法を必要とすると考える。
バイオメディカル研究部会は医学、生物学、工学とデザイン学の境界領域として考えられる広い範囲を研究対象とし
(1)バイオメディカルデザインの枠組みづくり
(2)バイオメディカルデザインの方法論や実践を通しての手法の確立
(3)バイオメディカルデザインの実践研究
についての考え方や研究の成果をここに表現していただく事を期待します。
7)子どものためのデザイン:Design for Children
岡崎 章(拓殖大学工学部デザイン学科)
2011年3月の東日本大震災は、社会に対するデザイン学の役割を、あらためて思考する契機となった。私たちは、これまでにも増して、旧来の「モノ・コト」という概念やデザインカテゴリーに捕われず、社会的視野からの未来志向型デザインに取り組まなくてはならないと考える。
テーマセッション「子どものためのデザイン」は、子どもを消費の対象としてではなく、未来の社会を支えるかけがえのない人材と位置づけ、あらゆる視点からデザインに何ができるのかを明示することを目的とした研究発表の場とする。そして、健康な子どもだけに焦点を当てるのではなく、災害を経験した子どもや、病気や障害をもつ子どもにも焦点を当てたい。すなわち、子どもの「快」のイメージを増幅するためのデザインと同様、「負」のイメージを軽減するためのデザインについても、その必要性を理解し、共有知識としていきたい。
研究の動機が子どものためであれば、目的や方法、成果のあり方については問わない。幅広い研究分野や領域からの参加と、活発な質疑応答を期待する。また、本セッションを足がかりとして、研究部会の設立につなげていきたい。
8)震災とデザイン:Disaster and Design
日本デザイン学会研究推進委員会
東日本大震災,あるいはこのような突発的な事象に対して,「デザイン学」から考える「デザインにできること」を改めて考える時期に来ているのではないでしょうか?また,それを考えること,議論することが学会の大きな役目ではないでしょうか。
震災の前と後では,デザインのパラダイムが大きく変換しています。このようなときこそ,これまでの研究領域には,関わりなく,新たなパラダイムを求めた研究を発表する場を設けたいと考えます。
その内容は,今回の震災や今後予想される大規模な災害,突発的な事象を対象にした,広く震災を契機に考えたことや震災に対する事前・事後の対応,想定外の事象に対してデザインができること,一般的な震災後のデザインパラダイムなどについてです。
具体的には,基盤となる調査成果や実践的なデザイン成果,解決すべき,あるいは考えるべき問題の提起,これからの指針となるデザイン理論・提言などの発表を求めます。
新しい研究のカタチを提示していただければ幸いです。