デザイン科学事典
編集: 日本デザイン学会
出版社:丸善出版株式会社
発売日:2019年10月29日
刊行にあたり:
本書は,デザイン科学に関する初めての事典として刊行されました.
デザイン科学は,デザイン(設計)行為に関する知の統合を図ることで,その法則性の解明およびデザイン行為に用いられる知識の体系化を目指す学問です.20世紀までの学問体系が縦割り偏重であったことを受け,現在,横断型科学の必要性が強く問われています.デザインという行為そのものを研究対象とするデザイン科学は,その代表的な学問領域の1つとされています.
しかしながら,デザイン科学の基盤構築には幾多の課題がありました.たとえば,デザイン行為のメカニズム解明があげられます.(中略)さらに,デザインはさまざまな領域ごとに高度な専門化を推し進め,それに伴う細分化の一途を辿っています.そのため,細分化された各デザインには共通基盤となりうるデザイン科学が必要とされていますが,現在でも進行している細分化がその体系化の難しさを助長しているのも事実でしょう.
そのような状況下でデザイン科学領域の研究者たちは,これらの諸問題に対して,さまざまな領域の知の統合を図ることで,少しずつデザイン行為をひも解くことに成功し,デザイン科学の基盤構築を進めてきたのです.本事典は,それらの成果を結実させ,現有の知の統合を明示する狙いから刊行されることになりました.(中略)
編集委員会には,日本デザイン学会,日本機械学会,日本設計工学会,精密工学会,日本建築学会,人工知能学会(Designシンポジウムの6学会)から31名の編集委員・編集協力委員にご参加いただき,執筆も総勢103名の方々から玉稿を賜りました.また,後援学協会としては,上記の学会に加え,2017年度より毎年,デザイン関連学会シンポジウムを共催している芸術工学会,意匠学会,基礎デザイン学会,道具学会の4学会,さらに,多数の学会で構成される日本工学会と横断型基幹技術研究団体連合,インテリア学会,日本感性工学会,日本人間工学会,ヒューマンインターフェース学会,日本インダストリアルデザイナー協会にもご参加いただき,合計16学協会にご協力いただいております.
現在,デザインという言葉は,経営戦略・商品企画・技術開発を含んだモノ・コトづくりの現場のみならず,さまざまな分野で使用されており,その概念の多義化が進んでいます.それゆえ,デザインという創造的行為の本質を解明するデザイン科学に期待が寄せられています.本事典は,その期待に応える一助として刊行されました.
デザインや設計などのモノ・コトづくりに携わる方々はもとより,さまざまな分野の方々に利用していただければ幸いに存じます.
『デザイン科学事典』編集委員長
松 岡 由 幸